JA:破壊行為
破壊行為(荒らし、Vandalism)は OpenStreetMap コミュニティで合意された規範を意図的に無視することです。単純ミスと編集間違いは破壊行為ではありませんが、破壊行為の修正に使われるものと同じツールを使ってリバートする(訳注:編集を元に戻すこと)必要がある場合があります。
破壊行為ほか悪意のある編集の種類
破壊行為とは、もっとも素朴な感覚で捉えるなら地図上に「落書き」をすることで、子供じみたいたずらを動機にした行為のほか、意図的に OpenStreetMap に損害を与える行為もあります。純粋な破壊行為が行われることは比較的まれです。 OpenStreetMap は非営利のすぐれた理想であり、地図データはコミュニティが「所有して」います。ほとんどの人がこれを尊重しています。
不良な編集には、子供じみたいたずらに近い動機のほかに、様々な他の種類 の破壊行為がありますが、結果的に修正する方法は同じです。以下のようなものがあります。
- 著作権侵害
- OpenStreetMap データベース内の紛争(編集合戦)
- ウィキ上の紛争
- ボットの不適切な使用
- データの大掛かりな編集(タグの追加や変更など)
- 破壊的な行為の繰り返し
- スパム
- 正しいと認められたデータの意図的な削除や劣化
- 議論を経ていないインポート
単純ミスと編集間違いは破壊行為ではありませんが、リバートを要する場合もあります。
法的な位置づけ
多くの国ではサイバー犯罪に対する法律があり、「コンピュータシステムのデータの改竄とそれによる損害の発生」などに対応しています。 OSM での破壊行為で裁判沙汰になったり有罪になったりした事件は認知されていませんが、OSM に「落書き」をしつこく追加する人に法律の存在を示し、その行為は OSM に損害を与えていると通告する論拠にできます。
検出
OSM で破壊行為を検出しようとしても、前述の破壊行為の種別や深刻度や効果に幅があるため、一筋縄ではいきません。破壊行為の検出でもっとも簡易な方法の一つはメインページの変更履歴タブを使って、特定のロケーションに対する編集を検査する方法があり--市町村など範囲が限定される場合には簡便です。
破壊行為を自動的に検知するにはいくつかのアプローチがあり、大きくふたつに分類されます。変更セットか利用者か、どちらを注視する対象に選ぶかです。それでも、どのような検出システムであっても、どちらか一方のみでは、しばしば誤検知 false positives したり、「巧妙な」破壊者を取りこぼしがちです。
変更セットに注目する方法
検知の方法として変更セットを使うには、検査の対象はその変更セットのメタデータ、さらにおそらくは当該のオブジェクトまたはタグの特徴を調べて、悪意のある編集をあぶり出します。よく使われる方法として、オブジェクトの変更や追加、削除の件数に上限値を想定します。以下はプログラムの例で、架空のコードをあててあります。(訳注:for 差分file中の変更セットに対して:if 1,000件超のadd追加:インポートの可能性のフラッグ。if 1,000件超のmodified 変更:機械的編集の可能性のフラッグ。if 1,000件超のdeleted 削除:破壊行為の可能性のフラッグ。)
for changeset in diff file:
if more than 1000 objects are added:
flag as a potential import
if more than 1000 objects are modified:
flag as a potential mechanical edit
if more than 1000 objects are deleted:
flag as a potential vandal
この種類の情報検査には、根本思想としてユーザーは日頃のマッピングで大量のオブジェクトを編集しないという前提があります。しかしながら上記のサンプルを見るとおり、どのフラッグもあくまでも「可能性」にしてあるのは、それほど大量の処理をする合理的な説明が成り立つ場合を想定できるからです(例=許諾を受けたインポート、不良な編集の巻き戻しなど)。
変更セットのアプローチだと、タグから悪意のありそうな行動を暴露できる場合があります。通常、情報源に著作権のあるデータを載せると疑念の印(レッドフラッグ)が立ちますが、Bingなど既定の画像に不慣れな利用者の場合、うっかり 商標登録マークが非表示の商標 (例=Google、Garminほか) からデータを載せて誤検知 false positive を招くことがあります。その他の不良な編集を検知する手がかりとして、一般的でないまたは旧版の編集ソフトを使った、または例外もしくは無関係な変更タグや値が長大なタグを追加したなどは、目安になる行動の一部です。
変更セットを注視するもう一つの要素として、空間としての変更セットの傾向を考えます。オブジェクトの追加または編集では、たとえばスマイルマークなど絵文字、だらだらと饒舌(じょうぜつ)な表現、細かい点への固執 anatomical features やいたずらなど、当該のオブジェクトがこれらの落書きと比較して近似かどうか判断します。
ユーザーに注目する方法
ユーザーを注視する検知とは、特定の個人の編集傾向に着目します。その人は参加してから10分以内に編集を300件、行いましたか? 特定の新人編集者が削除しかしていませんか? ここでいう検知の目的は、当該の個人の行動をつかむことであって、対象のオブジェクト群の特徴ではありません。
破壊行為への対応
一般ガイドライン
2009年9月のメーリングリストで議論された観点は次の通り:[1]
- 全ての投稿者はいつでも、正確でよく調査された善意の変更を試みようとしているはずだと念頭におくべきです
- 我々はあらゆる投稿者はデータセットを(改悪ではなく)改善したい傾向にあることを確認する必要があります。もし投稿が疑わしいのであれば、相手の投稿者に見直して返信する様に依頼すべきです。
- 我々は、人は誤りを犯すものであり、学習には時間が必要で、新しい参加者はしばしば手助けに反応するものだという点に目を向けるべきです。
- 我々は投稿者に対して、変更セットにコメントを追加してほしい、その興味と知識の詳細は有益だから個人ページに掲載してくれないかとお願いすることはできますが、強制はできません。とはいえこれをやっておくと、結果としてリバートの必要が無くなったり、その個人に合った手助けができる傾向にあります。
- 誰かが奇妙な編集をしているように思えた際には、最初に「善意(訳注:good faith)」を信じながらも注意深く見守り、必要であれば他の人と議論すべきです。
- もし、ウェイに対する編集の多くが悪意があったり、他人を不快にしたり中傷であると明確に証明された場合や、これらがプロジェクトの信用を失墜させる可能性があれば、関連する変更セットは議論または変更セットを100%チェックすることなしに、直ちにリバートできます。
- その編集が、疑わしいが正しくないと証明できない場合、その人に連絡をとり、詳しい話を聞くべきです。筋道だてた説明が無かったり(あるいは返事がなかったり)、疑わしい編集が引き続き行われて投稿が有益であると思えない場合には、少なくともひとつ、疑念のある編集がなぜ正しくないか証明します。そして、その特定のもの及び当人が作成した可能性のある全ての変更セットのリバートが適切であるかどうか、他の人との議論を経てから決定すべきです。
- いったん誰かが問題のある投稿者として識別されても、その特定の編集から先の変更セットをリバートする前に、まずは一連の編集を手短に検査すべきです。
- もし問題が続くようであれば、「バーチャル・バン(訳注:仮アカウント削除)」を行います。この状態になると、当人からシステム管理者に連絡し、心を入れ換えたのでもういちどチャンスを欲しい、と言わない限り、その編集は変更の有用性を検証しないままリバートされます。
- もし誰かが世界のどこかで悪い編集を行うと、対応は世界のあちこちから行われます。というのも、特定の誰かがアイスランドにちょっかいを出す一方でアイルランドで良い編集を行ったとして、現地の人たちの考え方を理解できないなどと言い逃れをしても、そんなことはありえないからで — 私なら他人の良い作業まで巻き込んで無意味なものと化してしまい偶発的な被害にあわせる代わりに、良い編集を保護することを選ぶでしょう。
- 他の人々の作業をリバートする人は、その問題に対して十分な理由があり、バランスの取れた決断であるという説明を準備しなければなりません。
- 「null」編集 — 要素を「変更する」以外に目的がない編集 — は、誤りの場合や編集者の都合で行われたり、エリアを更新するために有益であったりします。しかし「null」編集を多用すると、混乱を招く行為だとみなされるでしょう。
通常のリバート
破壊行為の範囲がローカルで、コミュニティ全体への影響が限られたものである場合、OSMサイトのメッセージ機能を使い、相手に悪意が無いという前提で直接、礼儀正しく連絡し、反応を24~48時間待ってください。もし適切な反応が無ければ、その問題について適切なメーリングリスト(通常はその国やローカルのリスト)上や信頼できる個人と議論するのが妥当でしょう。いくつかの編集が非生産的であると証明でき、役に立つ編集かどうか明らかでない場合は、疑念のある変更セットはリバートされるべきです。
スピーディなリバート
もし、ウェイに対する大多数の編集が悪意のみで行われたり、他人を中傷したり不快であると証明するか、プロジェクトの信用を失墜させると考えられる場合には即座の対処が重要で、まずリバートするのと並行してその投稿者に問いかけてください。同時にデータ・ワーキンググループに連絡することも適切です。 悪意のある編集の後始末には複雑な版の差し戻し作業が関連するため、 ツールに不慣れな人はコミュニティまたはデータ・ワーキンググループの応援を頼んでください。
一時的なブロック
もし変更セットの協議と/あるいはメッセージを介して連絡をしても、当該のマッパーが返信を拒否したり行動を改めない場合は、問題のあるユーザーにデータ・ワーキンググループ(DWG)による一時的なブロックをかけることがあります。かと言ってプロジェクトが罰したのでも不正行為があったと判断したのでもありません。むしろマッパーに OSM サイトへログインすることを伝え、 API 経由のアップロードはブロックのメッセージをきちんと読むまで控えてもらうためです。
プロックの期限には長短いろいろあり、 0 時間から 96 時間が設定されます。またユーザーにログインを義務づける働きがあり、あるいはブロックの長さに関わらずユーザーが読むまで、ブロックメッセージを掲出し続ける機能があります。DWG のメンバーはマッパー同士で衝突し返信をしない場合の対策の第1段階として、ブロックメッセージが既読になったかチェックする条件を設定し、特定のアカウントに 0 時間のブロックをかけることがよくあります。ブロックの履歴はこちら。
永久追放
詳細は OSM Foundation ban policy (永久追放の方針)をご参照ください。
ツールとリンク
関連する地物にそれ以上引き続き編集が加えられていない限りにおいて、特定の変更セットをリバートすることができるツールがあります。これらのツールは現時点では使うのが難しく、さらなる打撃を引き起こすことなしに操作するには優れた技術的知識が必要です。
ガバナンス
可能な場合にはローカルのOpenStreetMap コミュニティが上記手順を通して破壊行為を解決に努めてください。
データ・ワーキンググループ
- 主な記事:Data working group
データ・ワーキンググループ(DWG)はより深刻な破壊行為の取り扱いをファウンデーションより任じられており、月次の理事会会議で理事会に報告します。コミュニティのアプローチが機能しない例外事例はデータ・ワーキンググループ(data@osmfoundation.org)に通告すべきです。
開発
破壊行為に関連する問題を扱うのに使えそうな多くのツールがあります。使えそうなツールとは以下を含みます:
- ホワイトリスト White lists フィルターを免除する除外リスト
- データの巻き戻し Data rollback — 評価の固まったツールを使い、コミュニティが自発的にタスクを実行
- データの削除 Data deletion — 評価の固まったツールを使い、コミュニティが自発的にタスクを実行
- 巻き戻しの変更
- 履歴の除去 History removal — 高い次元の利用者権限が必要
- 巻き戻し Rollbacks
- 最近の履歴を添えたデータ Data with later history
関連項目
- Abuse 不正行為
- DMCA Designated Agent デジタルミレニアム著作権法の通告
- 品質保証
- Spam スパム
- What's the problem with mechanical edits? 機械的な編集のどこが問題か